
皆さんは仮想通貨のハードフォークの仕組みをご存知ですか?
最近仮想通貨に触れ始めた方は聞いたこともないかもしれませんし、トレードに熟練した方でも仕組みを詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、
・仮想通貨のフォークの基本情報
・ハードフォークとソフトフォークの違い
・フォーク後の値動き
・ハードフォークに対応した取引所
について解説したいと思います。
本記事の内容
そもそも仮想通貨のフォークとは?
まずはフォークがどういうものなのか、簡単に基本情報を整理してみましょう。
仮想通貨のフォークの基本情報
フォークとは、ブロックチェーンが分岐することを指します。
実は、ブロックチェーンのフォークは偶然にも起こることがある出来事です。
なぜなら、多くのマイナーが同時にマイニングを行っているので、ネットワーク上で偶然複数のブロックが同時に生成されてしまうことがあるからです。
こういったケースでは、一旦チェーンがフォーク(分岐)しますが、一番長いチェーンを正しいチェーンとする決まりがあるため、多くのブロックが生成されたチェーンが残り、一本に収束します。
短い方のチェーンは、オーファンブロック(orphan blockまたは孤立ブロック)として破棄されます。
オーファンブロックをマイニングしてもマイナーは報酬が得られないため、むやみにブロックチェーンを分岐させることなく一本のチェーンを伸ばしていくインセンティブが働いています。
ハードフォークとソフトフォークの違いを比較!
これから説明するハードフォークとソフトフォークはそれぞれ仕様の変更が行われ、意図的にブロックチェーンをフォークさせるケースです。
ハードフォークの種類
ハードフォークは、ブロックチェーンに後方互換性のない変更を加えるブロックチェーンの仕様変更のことです。
後方互換性のない変更とは、新仕様として既存のルールを緩めることです。
緩めたルールに従ったブロックは、古いルールを満たさないため、後方互換性がない、という言い方をすることが出来ます。
フォークした後に分岐が続いていくかは、新仕様のマイナー支持率に左右されます。
ハードフォーク①:0%の場合は分岐しない
新仕様を支持するマイナーが0%だった場合、旧仕様のチェーンがそのまま続いていき、分岐は起こりません。
ハードフォーク②:0%より多く50%未満の場合は分岐しない
新仕様を支持するマイナーが0%より多く50%未満だった場合、フォークしてしばらくは新仕様のチェーンがマイニングされますが、支持率が半分未満のために新仕様のチェーンがオーファンブロックとなり破棄されます。
そのため、短期間は分岐がありますが継続せず、旧仕様のチェーンがそのまま続いていきます。
ハードフォーク③:50%以上100%未満の場合は分岐する
新仕様を支持するマイナーが50%以上100%未満だった場合、どちらも有効なチェーンとなり、旧チェーン・新チェーン共に継続し、分岐が続いていきます。
ハードフォーク④:100%の場合は分岐しない
新仕様を支持するマイナーが100%だった場合、旧チェーンのマイナーがいなくなりチェーンが継続されなくなるため、新チェーンのみが伸びていくことになります。
ソフトフォークとは?仕組みを解説
ソフトフォークは、後方互換性のある変更を加える仕様変更のことです。
後方互換性のある変更とは、新仕様として既存のルールより厳しくすることです。
厳しいルールに従ったブロックは、古いルールも満たすため、後方互換性がある、という言い方をすることが出来ます。
ソフトフォークは分岐が起こっても、マイナーの過半数が指示したルールに収束するので、どちらのルールに収束したとしても分岐が継続することはありません。
過去に行われたハードフォークの事例は?
ハードフォークの仕組みが大まかに理解できたところで、過去に行われたハードフォークの事例を見てみましょう。
2016年6月にイーサリアムクラシックが誕生
イーサリアムクラシックは、THE DAO事件をきっかけにイーサリアムから分裂し、誕生しました。
2016年、THE DAOという非中央集権の投資ファンドが生まれました。THE DAOは、ユーザーがDAOトークンをETHで購入する形で投資を行うものでした。
この投資ファンドがシステムの脆弱性を突かれる形でハッキング被害に遭い、集めた資金の約1/3を盗まれてしまう事件が起きました。
金額は65億円相当で、この不正な資金の移動をなかったことにするためにイーサリアムのハードフォークが実行されました。
しかし、THE DAO事件はイーサリアムに原因があったわけでは無いのに、イーサリアムに介入するのはおかしいという意見がでました。
ハードフォークしに納得できない反対派のコミュニティが、元のイーサリアムのブロックチェーンをそのまま利用したものが、現在のイーサリアムクラシックです。
2017年8月にビットコインキャッシュが誕生
ビットコインキャッシュは、Segwitの導入にあたって分裂騒動が起こった結果誕生した仮想通貨です。
Segwitは、本来ブロックチェーンのブロック内部に格納されている「署名」をトランザクションデータから分離させてブロック外に出すことでスケーラビリティ問題を解決し、処理速度をあげるためのアイデアでした。
スケーラビリティ問題の解決はユーザーにとってはポジティブなことであり、賛同も多かったため、Segwitを導入しないブロックを排除するユーザー主導のソフトフォークが成立するのではないかと考えられていました。
しかし、Bitmain社をはじめとした中国の大手マイニンググループがこのソフトフォークに猛反対しました。
なぜなら中国のマイニングプールの多くがコスト削減のためにマイニングアルゴリズム「ASICBoost」を使っていましたが、この「ASICBoost」はSegwitでは使用できなかったからです。
そしてBitmain社は、そのままSegwitの導入を行えば、ビットコインのユーザー主導のハードフォークを行うと宣言し、完全に対立してしまいました。
そのままではスケーラビリティ問題が解決しないので、2017年5月に話し合いの場が設けられ、Segwit2Xというブロックサイズを2倍にするハードフォーク案が提示されました。
それで全会一致し、解決したかに見えましたが、結局8月1日にSegwit反対派主導でハードフォークが行われてしまい、ビットコインキャッシュが誕生したのです。
ハードフォークと新規コインの付与
ハードフォーク③のケースで、旧チェーン・新チェーンの両方が継続するとき、新チェーンのコインが付与されます。
そのわかりやすい例が、2017年のビットコインのハードフォークでしょう。
ビットコインのハードフォーク
2017年から2018年にかけて、ビットコインからのハードフォークが多く行われ、たくさんの新規コインが生まれました。
2017年8月:BCH(ビットコインキャッシュ)
2017年10月:BTG(ビットコインゴールド)
2017年11月:BTD(ビットコインダイヤモンド)
2017年12月:LBTC(ライトニングビットコイン)
2017年12月:SBTC(スーパービットコイン)
2018年2月:BTCP(ビットコインプライベート)
みんながハードフォークしたコイン欲しさにBTCを購入して、BTCの価格が上がり、付与されたハードフォークコインに価値がつき無から有が生み出される、という形で、一連のビットコインのハードフォークを経験した人々の中には「ハードフォーク=新規コイン付与イベント=儲かる」という認識が出来上がってしまった人もいるのではないでしょうか。
ハードフォークすると値動きはどうなる?上がる?下がる?
次に、仮想通貨がハードフォークするときの値動きがどうなるか見てみましょう。
値上がりしたケース
仮想通貨がハードフォークするときに値上がりするケースとしては、新規コインの付与に伴う買いの集中があります。
これは、2018年3月下旬から6月下旬までのMonero(XMR)のチャートです。
4月中旬から下旬にかけて価格が大きく高騰しているのがお分かりいただけると思います。
これは、4月末にMoneroV(XMV)というコインがハードフォークし、airdropで付与されたことを反映した値動きです。
XMRの所持量の10倍のXMVが付与されるということで、期待した仮想通貨投資家の買いが集中し、値上がりしました。
値下がりしたケース
一方、ハードフォークするからといって絶対に値上がりするとは限りません。
これは、2016年6月中旬から7月下旬までのEthereum(ETH)のチャートです。
6月17日のTHE DAOのハッキングをきっかけに価格が大きく下落しているのがお分かりいただけると思います。
その後、7月20日(チャートの右端部分)にハードフォークが行われ、イーサリアムキャッシュが誕生しましたが、トレンド転換は起こりませんでした。
他にも、ハードフォークにあたって新規コインを期待して買いが集中していたところで、ハードフォーク延期や中止が告知され価格が下落するケースもあります。
ハードフォークによる新規コイン付与は、無から有を生み出すチャンスになり得ますが、高騰中に買って、延期や中止の告知があると、結果的に高値掴みになってしまうこともあるので、気を付けたいですね。
ハードフォークのメリット・デメリット
ハードフォークやそれに伴う値動きについて見てきましたが、ココでハードフォークのメリットとデメリットについて確認してみましょう。
ハードフォークのメリット
ハードフォークのメリットとしては、まず技術的な問題の解決があります。
ソフトフォークでは対応しきれないバグの修正や機能を充実させるものなど、今までの問題を解決しアップデートをすることが可能です。
また、The DAOのような第三者のエラー(ハッキングなど)を受けてハードフォークが行われた場合、その出来事をなかったことに出来るメリットもあります。
そして、前述のとおり、ハードフォークしたコインが付与されることがあるのもメリットと言えるでしょう。
ハードフォークのデメリット
ハードフォークのデメリットとしては、プログラム更新に伴い、送金の遅延や通貨の紛失が起こる可能性があることです。
また、それらのリスクに対処するために取引所が一時該当通貨の取引を停止させることがあり、それに伴う混乱が起こることがあります。
さらに、ハードフォークが起こるとコミュニティが分裂してしまい、マイニングに参加している人々の計算量であるハッシュレートが減ってしまい、51%アタックが起こりやすくなってしまい、安全性が低下してしまうこともデメリットです。
保管しておくだけ!お得にハードフォークした通貨を受け取ろう!
ハードフォークする仮想通貨を買ってもどうやって新規コインが受け取れるの?と思った方もいるかもしれませんが、受け取る方法はとても簡単です。
ハードフォークに対応している取引所に該当通貨を保管しておくだけで受け取ることができます。
ビットフライヤーやコインチェックは付与されないことも
今までのハードフォーク事例を振り返ると、ビットフライヤーやコインチェックといった国内取引所では新規コインが付与されないことがあるようです。
2017年10月のBTG(ビットコインゴールド)のハードフォークにあたって、両取引所とも付与に対応する予定であるとの声明を発表しましたが、現在に至るまでBTGの付与はありません。
ハードフォーク対応した取引所はバイナンス!
それではハードフォークに対応している取引所はどこになるのでしょうか。
We support every Fork 🍴
— Binance (@binance) 2017年12月11日
上記のツイートを見ていただいてもわかる通り、バイナンスは公式Twitterで明確に「すべてのハードフォークに対応する」意思を見せています。
未だバイナンスの口座を開設していない方は、次期ハードフォークコイン付与のためにも開設してみてはいかがでしょうか。
ハードフォークに対応しているハードウォレットは?
ハードフォークにあたって取引所に多額の資産を置いておくのが心配…という方にはハードウォレットのLedger Nano Sがオススメです。
ハードフォークに対応する際には、Ledgerの公式サポートでどのようにコインの付与を受けたらいいのかの説明がされるので、安心ですね。
懸念点としては、すべてのオルトコインに対応しているわけではないところですが、ハードウォレットの中では圧倒的に対応通貨数が多くなっています。
今後ハードフォークする予定の通貨一覧!
最後に、今後ハードフォークする予定の通貨を確認してみましょう。
2018年以降ハードフォーク予定の通貨の日程
2018年下半期にハードフォークする予定の通貨として、以下の日程が確認できました。
他にもあまり有名でない通貨や取引高の少ない通貨のハードフォークが起こる可能性はあります。
2018年8月31日:Bytecoin(BCN)
2018年9月9日:ZClassic(ZCL)
2018年Q4:Dogecoin(DOGE)
(※該当のハードフォークは延期および中止になる可能性があります。)
ハードフォークとは?まとめ
ここまでの内容をまとめると、仮想通貨のフォークにはハードフォークとソフトフォークがあり、ハードフォーク自体にも種類がありました。
そのうち、ハードフォークしたコインが付与されるものがあり、そういった事例では買いが集中して価格の高騰が見られます。
しかし、ハッキングが原因のハードフォークであったり、ハードフォークの延期や中止があったり、必ずしも高騰が見込めるわけではないこともおわかりいただけたと思います。
これからは、価格変動の可能性があるイベントとして仮想通貨のハードフォークに着目してみてはいかがでしょうか。