
仮想通貨の王様といえば、やはりBitcoinですよね。
ですが、Bitcoinは基本的に決済用の通貨です。
Bitcoinと並んで有名な仮想通貨に、Ethereum(イーサリアム)があります。
仮想通貨界では、ブロックチェーンの技術は決済以外にも活用できるとして、Bitcoin 2.0なる概念が誕生しました。
Ethereumは、そのBitcoin 2.0の先陣を切って走るプロジェクトです。
Bitcoinに次ぐ時価総額なので、いろいろな場所でEthereumの解説や考察がされています。
ただ、Ethereumをしっかり理解しようとすると、スマートコントラクト、DApps、コンセンサスアルゴリズム、Sharding、Plasma、セカンドレイヤー、etc...と、色々な専門用語が出てきて、とても難しいですよね。
そこで、今回はEthereumについてしっかり理解できるよう、Ethereumの仕組みや使われている技術、そして最近の動向に至るまで、全体像を把握できるよう詳しく見ていきたいと思います。
本記事で触れられているようなEthereumの内容についてしっかり理解しておくと、他の通貨について知る際の手助けにもなりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
本記事の内容
Ethereumとは何か?初心者でも簡単に分かる概要
まずは、簡単にEthereumの概要についてまとめたいと思います。
Ethereumの入門まとめ|マネピwiki
通貨の名前 | Ethereum |
通貨単位 | ETH |
発行上限枚数 | 上限なし(将来的に実装予定) |
取扱い国内取引所 | bitFlyer、Zaif、GMOコイン、DMM Bitcoin 等 |
取扱い国外取引所 | Binance、OKEx、Bitfinex 等 |
開発組織 | Ethereum Foundation |
開発者 | Vitalik Buterin 他 |
公式サイト | https://www.ethereum.org |
ホワイトペーパー | https://github.com/ethereum/wiki/wiki/%5BJapanese%5D-White-Paper |
取引承認システム | PoW(PoSに移行予定) |
取引承認スピード | 約15秒 |
ブロックサイズ | 可変 |
Ethereumの特徴とは?仕組みや技術について解説
では、ここからEthereumの特徴について、その仕組みや技術を一つずつ見ながら紐解いていくことにしましょう。
Ethereumは「ワールドコンピューター」プロジェクト!
Ethereum: the World Computer https://t.co/o6m9YCCSJ2
— Ethereum (@ethereum) 2015年9月7日
よく、Ethereumは、DAppsのプラットフォームである、と説明されることがあります。
これは正しいのですが、Ethereumのプロジェクト全体を表すものではありません。
Ethereumは、「ワールドコンピューター」という概念を、ブロックチェーンの技術を使って実現するためのプロジェクトなんです。
……といっても、なんのことだかさっぱりですよね。。。
大丈夫です、しっかり紐解いていきましょう。
ワールドコンピュータを理解するのに重要な概念が2つあります。
一つ目が「スマートコントラクト」、二つ目が「DApps」です。
それぞれについて、見ていきましょう。
①「スマートコントラクト」とは?
「スマートコントラクト」は、直訳すると「賢い契約」となります。
……これだけではまだ何のことだかわかりませんよね。
ですが、これ自体は新しい概念ではありません。
「スマートコントラクト」とは、契約の内容があらかじめ決まっていて、契約者の一方が申し込みをすると、その相手方の意志にかかわらず、定義された内容どおりの契約が自動的に実行されるものをいいます。
よく例に挙げられるのが、自動販売機ですね。
自動販売機は、あらかじめジュースの値段が決まっています。
そして、「自動販売機に入れられたコインの値段が、選択されたジュースの値段以上であれば、選択されたジュースを出して、おつりがあれば返却する」という契約を自動的に処理しています。
IT化された現代社会では、さまざまな契約がスマートコントラクトとして、あらかじめ定義され、自動的に処理されています。
「じゃあ、別に新しくもなんともないじゃん。」と思いますよね。
その通りで、これだけでは何もスゴくありません。
これと、次にご紹介するDAppsが組み合わさることに、Ethereumの強さがあります。
②「DApps」とは?
DAppsは、”Decentralized Applications”の略語です。
これを訳すと、「分散型アプリケーション」となります。
ざっくり言うと、ブロックチェーンの技術を使って動くアプリケーションの総称です。
こちらはブロックチェーンが生まれてからできた概念なので、全く新しいものになります。
DApps最大のメリットは、「アプリやサービスの運用が非中央集権的である」ことにあります。
どういう意味でしょうか。
日頃使っているアプリやサービスは中央集権的!?
みなさんが普段から使っているアプリやサービスは、そのほとんどが中央集権的です。
中央集権的というのは、特定の個人や団体によって管理されている、というような意味合いです。
たとえば、皆さんも利用していると思われるLINEは、LINE社が提供しているアプリで、メッセージの内容や連絡先の情報なんかはLINE社が管理しています。
Googleが提供する検索やマップなどといった様々なサービスも、Google社がしっかり管理を行うことで、私たちが利用できるようになっています。
中央集権には重大な問題がある
こうした中央集権的なアプリやサービスには、重大な問題が潜んでいます。
その問題点は、主に2つ。
一つ目が、信頼性の問題です。
アプリ・サービスを利用できるのは、特定の管理者がそれらを提供しているからです。
この管理者が適切な管理をしないと、アプリ・サービスが利用できなくなってしまうおそれがあります。
二つ目が、セキュリティ・プライバシーの問題です。
中央集権的な仕組みでは、どうしても一点に重要な情報が集中してしまいます。
そのため、情報管理のセキュリティリスクや、プライバシー情報の取扱いなど、注意しなければならない点が多くなってしまうのです。
Facebookを例に考えてみよう
たとえば、Facebookを考えてみましょう。
Facebookは個人のパーソナルな情報を登録して、友達や知り合い、共通の興味を持った人同士でつながることができるサービスです。
当然ですが、Facebookに登録した情報は、全てFacebook社が管理しています。
私たちがFacebookにアクセスして見ている友達の情報も例外なく、です。
Facebook社が一手に情報を管理しているということは、Facebook社が悪意ある攻撃を受けた場合、サービスが利用できなくなる危険性がある、ということになります。
また、Facebook社のサーバーにハッキングを仕掛けて、情報を盗み出す人が現れるかもしれません。
はたまた、Facebook社が第三者にユーザーの情報を意図的に漏らしてしまうかもしれません。
(実際にFacebook社から8,700万人分の情報が漏れてしまったというニュースもありました。
参考:https://www.gizmodo.jp/2018/04/what-happened-facebook-andus.html)
DAppsは中央集権の問題を解決できる!
このような、中央集権的なアプリやサービスの問題点を解決できるとされているのが、DAppsなのです。
DAppsは、特定の管理者を置きません。
じゃあアプリやサービスで使う情報はどうやって管理するの?と思いますよね。
そこでブロックチェーンの登場です。
DApps上で扱われる情報は、ブロックチェーン上に記録・展開されます。
利用者は、このブロックチェーン上に記録された情報を参照するわけです。
また、ブロックチェーンは利用者のコンセンサスによって運用されるため、基本的にはそのDAppsを利用する全ての人が、同時にそのDAppsの管理者にもなります。
それぞれの利用者が、相互的に利用・管理することで動くのがDAppsなのです。
また、ブロックチェーン上に展開されるということは、そこに記録される情報が理論的には改ざん不可能である、ということになります。
情報が改ざんされたり、どこかに行ってしまうリスクがないというのが、DAppsの強みなのです。
EthereumならDAppsを簡単に開発できる!
Ethereumは、このDAppsを簡単に開発して運用することができます。
DAppsをイチから開発するというのは、開発者にとっては大変な作業です。
というのも、ブロックチェーンを全て自前で開発しなければならないからです。
ブロックチェーンの仕組みは、セキュリティの堅牢性やシステムの柔軟さなどを考えるととても複雑になります。
これを全て作るというのは、開発者にとって大変なコストなのです。
そこで、Ethereumでは、Ethereumブロックチェーン上に、好きなDAppsを開発して展開できるようにしたのです。
③DAppsが開発できる=ワールドコンピューター?
ただ、これだけだと「ワールドコンピューター」の概念には少し足りません。
先ほど、DAppsの特徴について説明しましたよね。
DAppsの特徴は、
①特定の管理者がおらず、分散的である
②ブロックチェーン上に情報が展開され、理論的に改ざんが不可能
です。
この特徴、実はBitcoinにもあてはまります。
BitcoinもDAppsの一種なんです
Bitcoinは、「AからBへ1BTC送った」という送金記録を全てブロックチェーン上に保存(=②)し、その記録をBitcoinの利用者(マイナー)が検証することで分散的に管理(=①)することで、運用されています。
上に挙げたDAppsの2つの特徴を備えていますよね。
そうです、Bitcoinも、広い意味ではDAppsと言えるのです。
それなら、EthereumはBitcoinのコピーが作れるだけで終わってしまいます。
もちろん、そんなわけがありません。
Ethereumの強みは「スマートコントラクト×DApps」!
Ethereumのさらに注目すべきところは、DAppsの前に紹介したスマートコントラクト。
Ethereumでは、DAppsに多彩なスマートコントラクトを埋めることができるのです。
Bitcoinは決済の機能しか持っていませんが、Ethereumで作ることができるDAppsは、頭の中で考えられるものならだいたい実現できてしまいます。
世界的に見てみると、小売店での簡単な決済、保険、ゲーム、選挙の電子投票、土地の登記、予測市場、……などなど、本当に色々なサービスがEthereumベースのDAppsとして登場しているところです。
結局、「ワールドコンピューター」とは何なのか
将来的には、いま私たちがPCやスマホを通して使っているアプリやサービスがDAppsに置き換わり、DAppsの利用者がみんなでブロックチェーンを管理することで、世界中のコンピューターがブロックチェーンを介して繋がり、まるで世界が一つの巨大なコンピューターによって覆われる。
そんな世界をEthereumは実現させようとしています。
これが「ワールドコンピューター」の概念です。
まとめると、Ethereumの目指す「ワールドコンピューター」は、
①Ethereumブロックチェーン上でスマートコントラクトを備えたDAppsを作れる
②Ethereumブロックチェーンは利用者みんなで管理する
③世の中のアプリやサービスをDAppsに置き換える
⇒世界中のコンピューターがブロックチェーンを介して繋がり、一つの巨大なコンピューターになる
こういった手順で実現される世界をさします。
これで、Ethereumのコンセプトはだいたい掴めたのではないでしょうか。
ここからは、Ethereumのもう少し詳しい仕組みや機能について見ていきましょう。
Ethereumの基本的な仕組み
Ethereumは、開発するDAppsにスマートコントラクトを実装できます。
例えば、Bitcoinは、あらかじめ管理できる情報が決まっています。
基本的にBitcoinのブロックチェーンは、「誰が」「誰に」「いくらBTCを送金した」という情報しか記録・管理できません。
これに対して、Ethereumは「Ethereumでちゃんと動くように設計してあれば、どんなことに使ってもいいよ」ということになっています。
いわばEthereumは「白紙」の状態で、DAppsの開発者は自分の作りたいサービスに合わせて、管理する情報の"型"を作ることができるのです。
こうした、柔軟なDAppsの開発を支える技術が、Ethereumにはこれでもかと入っています。
ただ、とても全ては紹介しきれないので、基本的で大事な部分に絞って紹介していきます。
①独自のプログラム言語「Solidity」
まずは、Ethereum上で動くDAppsを開発するためのプログラム言語についてです。
Ethereum上で動くDAppsを作るためには、Ethereum専用に開発された「Solidity」というプログラム言語を使う必要があります。
Solidityは、世界的にメジャーなプログラム言語であるJavaScriptとよく似ていますが、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを実行できるように最適化されています。
この「Solidity」は、”チューリング完全”なプログラム言語なので、頭の中で想像できるシステムはだいたい何でも実現できてしまいます。
DAppsを開発するために、独自のプログラム言語を覚える必要があるのは少し大変ですよね。
ただ、すでに1,500以上のDAppがEthereumベースで立ち上がっており、JavaScriptを扱える開発者であれば、Solidityの習得はそこまで難しくないようです。
(参考:DApps一覧を見られるサイトとして→https://www.stateofthedapps.com/)
②DApps開発に共通の準拠事項を設定している
さきほど、DAppsの開発は、「Ethereumでちゃんと動くように設計してあれば、どんなことに使ってもいい」と言いました。
ただ、開発者が好き勝手にDAppsを作ってしまうと、相互互換性がなくなってEthereumネットワークに混乱が生じてしまいます。
そこで、Ethereum上でDAppsを開発する際、最低限守らなければならない準拠事項が定められました。
それがERC(Ethereum Requests for Comments)です。
その中でも、20番目に定められたERC20では、Ethereum上でトークンを発行するための標準規格が定められたため、これに準拠したICOが多数実施されました。
ERC20による規格の標準化によって、開発者、取引所、利用者のそれぞれにメリットがもたらされます。
・DApps開発者にとっては開発基準が定められたことで開発がやりやすくなり、
・発行されるトークンを扱う取引所やウォレットの提供者はERC20準拠のトークンをまとめて扱いやすくなり、
・ICOに参加する利用者はERC20に対応したウォレットを1つ持っていれば色々なICOに参加できるようになったのです。
ERC20のあとにも、同規格の問題点を解決するERC223や、ERC721といった後続の規格も登場しており、日々アップデートされています。
③PoWからPoSに移行予定!その意図は?
ところで、Ethereumのコンセンサスアルゴリズムは、現在PoW(Proof of Work)で動いています。
報酬として、Ethereumネットワークを動かすための燃料(Gas)として使われるETHがもらえるわけです。
ですが、Ethereumは開発当初から、PoS(Proof of Stake)に移行する予定で開発されています。
PoWからPoSに移行する意図はどこにあるのでしょうか。
そもそも「コンセンサスアルゴリズム」とは
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンに格納されるデータの検証を行う仕組みの総称です。
ブロックチェーンは、格納するデータを利用者全体が検証することで運用されていきます。
ただ、誰もタダで面倒な検証作業をするわけがないので、ちゃんと検証をした人には報酬をあげます、というエサをつける必要があるのです。
この報酬を与える仕組みが様々で、計算量をもとにしたり、通貨の保有量を基準にしたりします。
ブロックチェーンに使われるコンセンサスアルゴリズムには、PoW、PoS、PoIなど様々なものがあります。
その中でも、PoWとPoSについて知っておくと、Ethereumのコンセンサスアルゴリズムを理解することができます。
PoWの仕組みと問題点
PoWは、認証作業を最も早く行った人に対して報酬を与える方式です。
BitcoinもPoWで動いています。
PoWは、ブロックの採掘のために高い計算能力を持ったPCを利用する必要があり、それを動かすために大量の電気を消費します。
こうした設備を個人が用意することは現実的でないため、マイニングを専門に行う企業がいくつも現れ、一部のマイナーによってブロックチェーンの管理が独占されてしまう危険があります。
現在も、Bitcoinのマイナーのうち、約4分の1を一つの企業が占めている状態です。
(参考:https://blockchain.info/ja/pools)
非中央集権を目指す仮想通貨が、一部の者に独占されてしまうと、本来の分散型の管理からはかけ離れてしまう結果となります。
最近では、PoW通貨が相次いで攻撃を受け、被害が出ています。
日本で支持者が多いMonacoinは、PoWの性質に起因する攻撃を海外の取引所が受け、約9万ドル相当の被害が出てしまいました。
現状ではサービス提供側で入金の承認数を上げる以外に有効な手段はありません。
PoWコインである以上は避けられない問題でもあるので、PoS等への移行も視野に入れていく必要があると考えています。— monacoinproject (@tcejorpniocanom) 2018年5月17日
PoSはPoWに代わるアルゴリズム?
PoSは、通貨の保有量に応じてブロックを検証する権利を付与し、報酬を与える方式です。
ブロックの検証に特別な施設を用意したり、莫大な電気を消費する必要はありません。
そのため、上述したPoWの問題点を解決できると期待されています。
Ethereumも、PoWを使っていることによる被害を未然に防ぐため、PoSへの移行が計画されているのです。
「じゃあ、最初からPoSでやればよかったのでは?」という疑問もあります。
しかし、Ethereumのプロジェクトが動き始めた当初は、PoSの有効性が充分検証されていなかったため、一部の者に独占されにくいよう独自にカスタマイズしたPoWでスタートされたのです。
Ethereumがスタートした当時から、PoWの問題は指摘されており、これに代わるものとしてPoSが提案されていました。
そのPoSにも、セキュリティリスクがあることがわかっています。
PoSは通貨の保有量によってブロック採掘の権利が与えられるので、貧富の差が広がっていってしまいます。
また、通貨をかき集めさえすれば、特別な設備を用意する必要なくブロックチェーンの管理を独占することができ、悪意あるマイナーによって攻撃を受けてしまう危険性があるのです。
そして、2018年現在、Ethereumでは、このようなPoSの問題を解決する機能を実装したCasperと呼ばれる独自のPoSアルゴリズムを採用する計画が進んでいます。
では、PoSの実装はいつ頃になるのでしょうか。
④Ethereumのアップデート計画を把握しよう!
Ethereumのアップデート計画について見てみましょう。
Ethereumは開発は、大きく次の4つのステージに分かれています。
1.Frontier(フロンティア)
2.Homestead(ホームステッド)
3.Metropolis(メトロポリス)
4.Serenity(セレニティ)
それぞれについて簡単に見てみましょう。
1.Frontier
Frontierは、2015年7月に最初に行われたアップデートです。
いわばβ版のリリースで、Ethereumの開発をはじめるための足がかりとなるアップデートです。
2.Homestead
Homesteadは、2016年3月に行われたアップデートです。
Homesteadでは、取引の認証時間が約15秒に短縮され、より多くの人が利用できるよう、採掘難度が調整されました。
3.Metropolis
3回目のアップデートであるMetropolisは、2段階に分かれています。
一つ目はByzantium(ビザンティウム)です。
Byzantiumは、採掘アルゴリズムをPoWからPoSへと移行するための準備、採掘難度調整式の変更、匿名性の強化等のアップデートで、2017年10月に実施されました。
二つ目はConstantinople(コンスタンティノープル)です。
Constantinopleは、主にセキュリティのアップデートが行われる予定ですが、具体的な内容や時期は未定となっています。
4.Serenity
4回目のアップデートであるSerenityでは、PoSへの完全移行が実現するとされています。
Constantinopleのあとに実装される予定のアップデートで、具体的な内容や時期は未定です。
アップデートはすべてハードフォークで行われる
上記のアップデートは、すべてハードフォークによって行われます。
基本的に、ブロックチェーンのアップデートは、チェーンのフォーク(分岐)によって行われます。
ハードフォークとは、アップデート前のチェーンとアップデート後のチェーンに互換性がないアップデートのことを指します。
(ちなみに、これに対して、両者の互換性を保ったままされるアップデートを「ソフトフォーク」といいます。)
そのため、ハードフォークによるアップデートをする際には、そのブロックチェーンの利用者全員がアップデートを適用する必要があります。
このアップデートを促すための方策としてよく用いられるのが、「ディフィカルティボム」という方法です。
「ディフィカルティボム」とは
ディフィカルティボムとは、ブロック生成のために行われるマイニングの難易度を意図的に上げることで採掘を難しくすることをいいます。
マイナーは、次のブロックを生成することができないので、報酬を得られなくなります。
これをアップデート前のチェーンにのみ適用し、古いチェーンのマイニングをさせないようにすることで、アップデート済みのブロックチェーンへの移行を促すのです。
計画的なハードフォークによるアップデートの際には、コミュニティの分裂や混乱を避けるため、よくこの方法が用いられます。
The DAO事件について知っておこう
しかし、ハードフォークは常に計画的に行われるわけではありません。
悪意ある攻撃がブロックチェーンに仕掛けられた場合に、それを修正したり防衛する目的で行われることがあります。
Ethereumでも、「The DAO事件」と呼ばれるハッキングが発生し、ハードフォークを行った経験があります。
The DAOとは、非中央集権投資ファンドのプロジェクトで、当時最高額のICOを達成し話題になっていました。
ところが、The DAOがプールしていたETHが、The DAOのバグ(Ethereum自体のバグではありません)をついたハッキングにより盗み出されてしまいます。
当時のレートで約5000万ドルです。
これを重く見た開発者が、盗み出された事実をなかったことにするためハードフォークを行うと発表し、ETH保持者の89%の同意を得て、ハードフォークが行われました。
このとき、Ethereum上のひとつのプロジェクトを救済するためだけにハードフォークを行うのは分散的ではないと反対した一部のマイナーが、フォーク前のチェーンを採掘し続けたことにより、Ethereum Classic(イーサリウムクラシック│ETC)が誕生したのです。
このハードフォークは計画的なものではなく、当時のマイナーからすると強硬的に採用されたように見えたため、結果としてチェーンが分裂してしまいました。
こういったことが今後起きないよう、Ethereumの開発陣はセキュリティアップデートを継続して実施しています。
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今後のアップデート予定は?
さて、あと2回の大型アップデートを控えるEthereumですが、その時期や詳細な内容はいずれも未定となっています。
ただ、Ethereumに実装される予定のPoSであるCasperのテストネット版が2018年初頭にリリースされており、今年中にメインネットにも実装される予定との予測が立っています。
こうしたアップデートは、Ethereumの利便性を向上させる、セキュリティを保つ、様々な問題を解決するなどの目的で行われます。
その中でも、Ethereumのスケーラビリティ問題に対する解決策が重要です。
⑤Ethereumのスケーラビリティ問題
Ethereumにも、スケーラビリティ問題があります。
スケーラビリティ問題とは、利用者が増えることで処理しなければならない取引きのデータ量が増えていき、同時処理の限界を超えることで、送金詰まりや手数料高騰を招いてしまう問題です。
Bitcoinはこれが表立って問題となり、一時は送金手数料が3,000円を超える事態となりました。
原因は、Bitcoinの取引量が増えたことと、Bitcoinのブロック生成間隔が10分と比較的長いこと、さらに1ブロック当たりのデータ上限が1MBと低いことなど、様々な要素が重なっていました。
Ethereumは、ブロック生成間隔は約15秒で、ブロックサイズもコンセンサスに基づいて、毎回最適なものに変更されるため、Bitcoinに比べれば取引量が増えても問題は起きにくいように思われます。
しかし、Ethereumのネットワークで行われるのは、単なる通貨の取引ではなく、DAppsで使われる様々な情報を処理する必要があります。
しかも、Ethereum上ではすでに1,500を超えるDAppsが稼働しているため、処理しなければならないデータは指数関数的に増加していきます。
そのため、Ethereumで処理されている取引の量は、すでにBitcoinのそれを大幅に超えている状況です。
2017年末には、CryptoKittiesというゲームDAppが人気になり、他のユーザーのトランザクションが遅れるなど影響が出て話題となりました。
(CryptoKittiesは、自分だけの子猫を育成し、成長させた猫を取引できるゲームです。)
今後、EthereumベースのDAppsはさらに増えると予想されており、Ethereumのスケーラビリティ問題は早急に解決しなければなりません。
様々な解決策が議論されているところですが、有名なものとしてはPlasmaやShardingという技術があります。
Plasma
Plasmaは、一般的にはセカンドレイヤーやサイドチェーンと呼ばれている解決方法です。
ざっくり説明すると、Ethereum上で展開されるDAppsに独自のチェーンを持たせ、それをEthereumのメインチェーンに接続して、個々のDApps内での処理をサイドチェーンに負担させるのです。
現在、ERC20等に準拠して作られたDAppsは、その処理(の一部)をEthereumのブロックチェーン上に展開しています。
DAppsが1個、2個なら問題ないのですが、何度も言っている通り、現在すでに1,500を超えるDAppsが稼働している状況で、今後さらに増えていきます。
これらのDApps全てが、Ethereumのチェーン上で処理を展開すると、Ethereumのチェーンはパンクしてしまいます。
そこで、それぞれにDAppsに独自のチェーンを持たせ、基本的にはそのチェーン内で処理を展開させます。
そして、処理の結果得られたデータを、Ethereumのメインチェーンに格納します。
こうすることで、Ethereumのチェーンに格納されるデータを少なくすることができるわけです。
また、サイドチェーンを採用することで、あるDAppsにバグが潜んでいたり、悪意ある攻撃を受けたとしても、そのDAppsのチェーンのみを修正したり、メインチェーンから切り離せばいいため、Ethereumネットワーク全体のセキュリティ向上も期待されています。
The DAO事件のようなケースが再び起こったとしても、その影響は限定的で済むようになるのかもしれません。
Sharding
Shardingは、Ethereumの処理を分業化させることで、処理能力を上げる技術です。
現在のEthereumは、ブロックを検証するノードが増えても、全員が同じブロックの検証をするので、ノードの処理能力がEthereumの処理能力の限界です。
いくらノードが増えても、処理能力は上がりません。
むしろ、すべてのノードがデータを共有するのに時間がかかるので、処理能力が下がることさえあります。
そこで、大量のノードをグループ分けし、それぞれが検証するデータを割り振って、分業化させます。
こうすると、効率よくブロックの検証をすることができるので、大幅にEthereumの処理能力を上げることができるのです。
たとえば、10個のトランザクションがあって、100人のノードが検証作業をするとしましょう。
現在は、100人それぞれが10個のトランザクションを(理論上は)全て検証しています。
この場合、全員がすべての取引を検証するので、セキュリティは確保されますが、検証が非効率的です。
しかし、Shardingの技術が入ると、大幅に作業効率があがります。
Shardingを導入すると、100人のノードが自動的にグループに分けられます。
例えば、10グループに分けるとすると、A~Jグループまで、それぞれ10人ずつのグループに分かれます。
そして、それぞれのグループに検証する取引が割り振られ、各グループは割り振られた取引のみを検証し、その結果をブロックに記録することになります。
この時、1人のノードが検証する取引の数は1つですので、作業効率は単純に10倍になっていうわけです。
ただ、それと同時に、1つの取引にかけられる検証は10分の1に減っていますので、その分セキュリティが低下することになります。
Ethereumが導入しようとしているShardingは、この例とは比べ物にならないほど複雑です。
基本的な考え方は上にあげた例の通りなのですが、セキュリティをなるべく保ったまま、作業効率をあげていこうとしているためです。
現在、開発チームは、その仕組みを試行錯誤している最中です。
ちなみに、Shardingを導入するには、コンセンサスアルゴリズムをPoSにしておく必要があります。
(PoSでなければできない、というわけではありませんが、PoWでShardingを導入すると、セキュリティが大幅に低下してしまいます。)
そのため、Shardingの実装はCasperが導入されるのと同時が、それよりも後ということになりそうです。
⑥Ethereum企業連合の存在
Ethereumは、それ自体の仕組みや技術だけでなく、コミュニティとしても相当強い地盤を持っています。
Ethereumには、数多くの企業からなるイーサリアム企業連合(Enterprise Ethereum Alliance)が存在します。
(公式サイト:https://entethalliance.org/)
EEAは、Ethereumを使ったDApps運用の可能性について、世界中の企業が協同で研究し、次世代の企業サービスを確立するためEthereumを役立てる目的で作られた企業連合体です。
その数はなんと500社以上にものぼり、KDDI、NTT、MUFG、トヨタといった日本の有名企業も参加しています。
ひとつの仮想通貨にこれだけ多くの企業が関わっているというのは、Ethereum以外にはほとんどありません。
それだけEthereumの可能性に期待し、研究するだけの価値があると踏んでいる企業が多いということです。
Ethereumの現在の相場チャートと時価総額とは?
では、Ethereum(ETH)の相場チャートや現在の時価総額ランキングについて見ていきましょう。
今現在の価格はいくらなのでしょうか。
リアルタイムで見るETHの現在のドルレートと価格推移
以下が、現在のETHのドルレートと価格推移です。
ETHの現在の時価総額ランキングは何位?
RANKの欄が現在のETHの時価総額ランキングとなります。
Ethereumの最新ニュースから分かる将来性!今後の動向は?
Ethereumは、DAppsのプラットフォームであることから、Ethereum自体のニュースだけでなく、EthereumベースのDAppsやトークンの情報に関しても目を通しておくと、良いことが多いです。
Ethereum用ASICへ対抗するためのアップデートはしない方針を決定する
2018年4月のEthereumの開発者会議において、Ethereum用に開発されたマイニング用マシンのASICに対抗するためのアップデートは行わないという方針が決められました。
ASICとは、仮想通貨のマイニングに特化したマシンで、通常のPCでのマイニングに比べて圧倒的に早くマイニング作業をすることができます。
EthereumのPoWシステムは、もともとASICに適さないようなカスタマイズが行われていました。
そのため、Ethereum用ASICは販売されていなかったのですが、今年に入ってついにEthereum用ASICが発売されると話題になったのです。
これについて、Ethereumの開発者会議では、「ASICに耐性のあるアップデートをすべきではないか」という提案がありました。
ASIC自体が悪いわけではないのですが、このマシンを特定の企業のみが出荷しているため、その利益を独占されるおそれがあると考えたためです。
これに対して、Buterin氏は、「Casperのテストネット版がすでにリリースされており、検証実験は約5.5ヶ月で終わるから、ASICに対応する必要はない」との見解を示しました。
Vitalik曰く「ASIC耐性を付けるフォークはしない。あと5.5ヶ月でCasper移行するし。」https://t.co/ns10GuozHk
— mineCC (@ETHxCC) 2018年4月6日
CasperはPoSなので、マイニング作業もマシンの性能に依存しません。
したがって、Casperが実装されれば、ASICマシンは使い物にならなくなるわけです。
Buterin氏は、ASIC対策のためだけにアップデートを行って利用者を混乱させるよりは、Casperの検証作業を早く進めて、PoSに移行したほうがよいと考えたということでしょう。
EthereumのPoS完全移行は第4アップデートSerenityにて行われるというのが当初の予定でしたが、Casperの検証作業がうまく進めば、PoS移行の計画が早まる可能性もありそうです。
Ethereumのビジョンを実現するにはPoSへの移行は必須と考えられますので、これが早まることは基本的にポジティブに捉えて良いでしょう。
ERC20トークンのBECでトークンを無限に増やせるバグが発生
2018年4月、ERC20ベースで作られたBECというトークンに、トークンを無限に増やすことができるというバグが見つかりました。
このバグによって、とんでもない数のBECトークンが増殖し、取引所がbatchTransferを用いているトークンの取扱いを一時中止するような事態となりました。
原因は、ERC20トークンすべてで起こるものではなく、BECが独自に採用した「batchTransfer」という関数にありました。
したがって、普通のERC20トークンに影響があるわけではありません。
Ethereum自体に問題があるわけではなく、トークンを発行した開発者がミスをしていただけです。
他のトークン開発者にとっては、自分たちの発行するトークンで問題が起きないようにという教訓になったことは間違いありません。
DAppsの開発やトークン発行が簡単にできるのがEthereumの強みですが、同時にこうしたDApps開発者起因のバグが発生するリスクがあるということが明確になり、今後のEthereum開発に生かされることを期待したいところですね。
米大手取引所のCoinbaseが分散型取引所(DEX)のParadexを買収
アメリカの大手仮想通貨取引所であるCoinbaseが、分散型取引所(DEX、Decentralized Exchange)を運営するParadexを買収することを発表しました。
分散型取引所(DEX)とは、特定の管理者がいない取引所のこと。
bitFlyerやBinanceといった取引所は、それぞれ運営会社がいて、利用者の取引を管理しています。
これに対してDEXでは、ブロックチェーンを活用することで管理者に頼らない仮想通貨取引を実現しています。
Paradexは、数あるDEXの中でも、ERC20トークンを扱うのが特徴です。
そして、各ユーザーのウォレットから直接、ERC20トークンペアの取引をすることができます。
CoinbaseがParadexを買収したことで、Coinbaseが提供するサービスとして、ERC20トークンの直接取引ができるようになりそうです。
ERC20トークンは、発行時の仕様を共通にすることで、各トークンの取扱いを統一することができるのがメリットのひとつでした。
今回の買収によって、ERC20の利点を多くのユーザーが体感することになるでしょう。
Ethereumの注目度の高さを伺わせる2つのニュース
Ethereumの本質に関わるものではありませんが、Ethereumの注目度の高さを伺わせるニュースが2つほどありました。
Appleの共同創業者であるSteve Wozniakが「Ethereumは次のAppleになる」と示唆
Appleの共同創業者として知られるSteve Wozniak氏が、ウィーンで行われたWeAreDevelopersというカンファレンスで、5,000人を前にして
「Ethereumに興味を持っている。Ethereumは長期的にはApple並に影響力を持つことになるだろう。」
という趣旨の発言をしたことで話題になりました。
今や知らない人はいないほどの超有名企業となったApple、その共同創業者がEthereumに注目しているということで、Ethereumの可能性を感じますね。
GoogleがEthereumの開発者であるVitalik Buterinのヘッドハントに挑戦
こちらは、Googleが、秘密裏に進めているブロックチェーンプロジェクトのために、Ethereumの開発者であるVitalik Buterin氏の採用にチャレンジしたというニュース。
当の本人であるButerin氏は、「Ethereumから出てGoogleで働いたほうがいいかい?」とTwitterでアンケートを実施。
過半数の59%がNOに投票しました。
(なお、当該ツイートは、Googleの採用担当者の情報が載っていたため、本人が削除しています。)
Googleが独自にブロックチェーンの研究をしているのは、ある意味当然と言えますが、そこにEthereumの開発者を引き入れようとしたという事実が驚きです。
EthereumはButerin氏の先導がなければ今の地位を築いていないので、彼の持っている開発力の高さを伺わせると同時に、ETHホルダーにとっては、Ethereumプロジェクトにとどまってくれたことで一安心といったところでしょうか。
Ethereumの最新のニュースはTwitterが早い!
これ以外のEthereumの最新ニュースは、公式Twitterアカウントや、開発者であるVitalik Buterin氏のTwitterを見るのが早いです。
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ETHの購入方法は?オススメの取引所をご紹介
ETHは、日本国内取引所ではbitFlyer、ビットバンク、Zaif、GMOコイン、DMM bitcoinなどで取扱いがあります。
なかでもビットバンクは2018年9月まで全通貨ペア取引手数料が無料です。
先日リリースされてたアプリも使いやすいですよ。
Ethreum(ETH)の仕組みから買い方までのまとめ
Ethereumの仕組みや技術、最新ニュースまで詳しく見てきました。
Ethereumは、「ワールドコンピューター」の実現をビジョンとして、DAppsを自由に開発・運用できるプラットフォームです。
すでに数多くのDAppsがリリースされているだけでなく、Ethereum本体の大型アップデートも控えています。
Ethereumがこれから社会に浸透していくため、今年はEthereumにとって大事な1年になること間違いなしですので、要注目です。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
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