
2018年10月2日のリップルの公式サイトにおいて、SWELL 2018:1日目センターステージにてグローバル規制政策についての講演、という最新ニュースの発表がありました。
SWELLとは、毎年10月頃に2日間程度にわたって開催される、リップル社主催のカンファレンスのことであり、リップルの現状や今後の方針などの重大発表が行われます。
今年(2018年)のSWELLにおいては、以下のようなことが主要な話題として挙げられました。
・リップル社CEOであるブラッド・ガーリングハウス氏による演説
・サンタンデール銀行の国際決済アプリケーションOnePay FXの拡大について
・グローバル規制対策について
・ブロックチェーン大量採用の転換点が近いことについて
・イギリス送金企業のTransferGoとの提携について
これらの話題については、リップル公式ホームページのニュース記事においても公開されています。
今回はこれらの話題の中でも、「グローバル規制対策について」、に関して焦点を当てたいと思います。
仮想通貨の規制に関しては、寛容な国もあれば、中国(人民元と仮想通貨の交換が全面的に禁止)のように厳しい国もあります。
しかし、コインチェック事件(コインチェックという日本の取引所が580億円分ものネム(NEM)をハッキングにより盗難されてしまった事件のこと)を皮切りに、日本だけでなく世界的にも仮想通貨の規制状況は強まってきております。
規制が強まりすぎると、仮想通貨の技術革新が起こりづらくなり、仮想通貨の普及が遅れてしまう(場合によっては無くなってしまう)原因となってしまうと言われております。
今年のSWELLにおいては、様々な重要人物によって、ブロックチェーンの展望とともに、国際的に見た仮想通貨の規制問題について語られました。
以下の動画で、講演の様子を見ることができます。
ブロックチェーンにはどのような未来があり、グローバル的観点での仮想通貨の規制に関してどのように語られているのでしょうか?
最新ニュース内容の詳細について見ていきましょう。
SWELL 2018:1日目センターステージにてグローバル規制政策についての講演(原文内容)
SWELL 2018初日センターステージにて、ブロックチェーン技術の未来について、そしてデジタル資産のグローバル規制についての講演が行われました。
国際通貨基金(IMF)元事務局長であるSunil Sabharwal氏は、ブロックチェーン技術が基礎となっているデジタル資産(仮想通貨)に、広範的なグローバル規制の機会を与えることを考えました。
国境を越えた決済(国際決済)において、企業間決済は約150兆ドルにもなります。
(企業同士における)国際送金には、約2400億ドルもの収入(手数料)がかかっており、(個人同士における)国際送金において、そのほとんどが移民同士での決済であり、それ(個人同士における国際送金総額)は年間5000億ドル~6000億ドルに及びます。
と聴衆に向かってSabharwal氏は説明しました。
この機会(国境を越えた決済により、世界中の様々な場所でビジネスができるという機会)にも関わらず、ビジネスを行う上での高いコストが、取引先銀行に深い影響を与え、リスクが高いと思われる多くの国々からの脱出へとつながります。
とSabharwal氏は説明しました。
これらの国でビジネスを行うコストは非常に高くなりました。
規制コスト、コンプライアンスコスト、それに伴う罰金やリスクのコスト、などが(ビジネスを行うコストとして)考えられます。
とSabharwal氏は語りました。
ブロックチェーンのような新技術が金融機関と規制当局の両方の問題を解決するのに役立つという考えは、その日の後のステージに登場した中央銀行の代表者によっても共有されたものであります。
ブラジル中央銀行の最高情報責任者であるMercelo Yared氏は、ブラジル中央銀行がこの技術(ブロックチェーン技術)を「決済を改善する方法」として見ていることを説明しました。(※ブラジル中央銀行は2018年6月に、Microsoftと提携しブロックチェーン技術を利用したシステムを導入することを発表しました。)
ブロックチェーン技術と分散台帳技術(DLT)は、我々が物事を解決するためのツールの一種です。
顧客情報を知り、そしてブラジルの金融システム内で情報の交換を行う際に、ブロックチェーン技術とDLTを使用することで、様々な物事の改善が見られました。
そして国境を越えた決済(国際決済)においても改善を見ることができます。
とMercelo Yared氏は言いました。
サウジアラビア通貨当局(中央銀行)のMohsen Alzahrani氏は、さらにこの意見(ブロックチェーン技術が物事を解決するという意見)を強く主張しました。
国境を越えた決済で生じる摩擦を除去するために中央銀行が発行したデジタル通貨を使用する、というコンセプト(構想)の証明のテストを、サウジアラビア中央銀行は行いました。
(※サウジアラビア中央銀行は、2018年2月にリップルの即時国際決済ソフトウェア製品であるxCurrentの試験的な導入を行っています。)
とAlzahrani氏は説明しました。
我々はこのテストにより、このxCurrentの導入が国境を越えた決済に効率性をもたらすということを発見しました。
決済コインを使用し、2つの異なる法定通貨の間で決済を行うことができるような通貨(を作ること)が、この技術(ブロックチェーン技術・DLT)を探索する上での我々の考えであります。
とAlzahrani氏は語りました。
大まかに言うと、一致した意見として、この技術(ブロックチェーン技術・DLT)は、適用を検討していた中央銀行にとって純益である(良いものである)というものでした。
Payments Canada(カナダの金融サービス企業)のSVP(上席副社長)であるAndrew McCormack氏は、
当社はこの技術にたくさんの希望を抱いており、ほぼ成熟しつつあります。この技術はもほや実現が疑問視されるようなものではありません。
と言いました。
ブロックチェーン(ブロックチェーン技術が基礎となっているデジタル資産・仮想通貨)においては銀行や規制当局が一般的に合意していると約束されていますが、規制枠組みに関する世界的な合意はまだありません。
国際通貨基金(IMF)の元事務局長であるSunil Sabharwal氏は自分のセッションで、デジタル資産(仮想通貨)の規制枠組みを決定する上で障壁(課題点)となるもの、に関する詳細を説明しました。
Sabharwal氏は、
課題点は世界的な協力です。
仮想通貨に関する限りでは、まず1つ目(の問題)として、企業同士で協力する必要があり、各国が集まりサイバー脅威(仮想通貨の盗難など)への対策アプローチを共有するための地政学的(政治的要素と地理的要素)な問題があります。
そして、2つ目の問題としては、(多くの中央銀行における反マネーロンダリングの)対策トレーニング不足であることです。
と言いました。
Sabharwal氏は、
現在IMFによって取り組まれている問題である反マネーロンダリング訓練に対して、多くの中央銀行がトレーニング不足であります。
と説明を続けました。
SWELL 2018の2日目が始まると、この会話の続きが期待できます。
いくつかのセッションでは、グローバル商取引の未来、ブロックチェーン技術の導入に関する新しい研究、どのようにしてリップルの顧客(銀行・金融機関)がブロックチェーン技術とデジタル資産を利用して世界中の何百万人もの人が行う国際決済サービスを改善するのか、などについても注目を集めるでしょう。
1日目の要約については、
どのようにして「価値のインターネット」を実現するための協力を行っていくのかというリップル社CEOのBrad Garlinghouse氏による発言
xRapidが商業的に利用可能になるというニュース
Ed Metzger氏(サンタンデール銀行の技術革新責任者)によるサンタンデール銀行のブロックチェーン搭載国際決済モバイルアプリ「OnePay FX」のビジョンについて
を確認してください。
Global Regulatory Policies Took Center Stage On Day One of Swell 2018
考察:ブロックチェーン技術・仮想通貨の発展には正しい規制体制が必要
今回のSWELLの講演により、サウジアラビア中央銀行とブラジル中央銀行という2つの中央銀行は、ブロックチェーン技術の未来に対して、「様々な決済の問題点を解決する有効な手段である」と肯定的に捉えていることが明らかになりました。
中央銀行は、各国ごとでその国の通貨の発行を行っている最重要な金融機関であり、このような公的に地位を確立している金融機関から認められているということは、今後ブロックチェーン技術が実用性を伴って普及していくうえで、重要な意味を持つと考えられます。
また、今回のSWELLの講演において、国際通貨基金(IMF)の元事務局長であるSunil Sabharwal氏は、仮想通貨取引の規制枠組みを決定する上で課題点となるものとして、
・サイバー脅威(仮想通貨の盗難など)への対策アプローチを、世界中の国どうしで共有できていない(共有が少ない)こと
・多くの中央銀行が、反マネーロンダリングの対策トレーニング不足であること
の2点を挙げました。
Sabharwal氏は、仮想通貨のリスクやその対策に関して、中央銀行や金融庁などの公機関はもっと積極的に理解する必要があり、理解した上で慎重な規制枠組みを決定する必要があると言っております。
これは、仮想通貨の理解をしようとせずに、ただやみくもに規制を強化しようとする公機関に対する批判であると考えられます。
また、仮想通貨の規制に関する口コミとしては、以下のようなものがありました。
愛の反対は無関心。
G20をはじめ、各国の規制機関が仮想通貨に関心を持たず、無視すればするほど市場の安定的成長は遅れる。
日本はまだ真面目に議論してて良い方だと思う。
単にブロックチェーンじゃダメだ、仮想通貨でユースケースを作って需要上げないと始まらない。
ETFはしょせん投機でしかない— Guko (@crypt_guko) October 13, 2018
◆ 金融庁、仮想通貨交換業協会に規制権限を付与◆
金融庁は24日、仮想通貨交換業協会に暗号通貨業界の自主規制権限を付与し、同協会は違反行為に対して管轄と制裁を行えるようになった。
金融庁官僚は「専門家によって官僚より迅速な規則制定が可能になる」と述べている。【情報提供:金色財経】
— Huobi Japan (@HuobiJapan) October 25, 2018
上の口コミから分かるように、10月24日に日本では、金融庁が仮想通貨交換業協会に規制権限を付与しました。
これにより、仮想通貨に詳しい仮想通貨交換業協会が官僚の代わりに、規制枠組みを制定することが可能になりました。
これをきっかけに日本の仮想通貨市場が、安定と自由の両方の要素を保つような健全な規制枠組みをもつ市場となって欲しいと思います。
これから仮想通貨を普及させていく上で、正しい規制体制を行うことはかなり重大であると思われます。