
Tehte(テザー)は、USDと1対1の価格である特殊な仮想通貨になります。
今回は、テザーの今現在抱えている問題をスマートコントラクト解決できるのか?について詳しく考察を見ていきましょう。
仮想通貨Tetherという概念
TetherはUSDを仮想通貨の形で利用できる、言い換えれば仮想通貨の形でUSDと同等の価値を持たせることが出来ることで知られています。
1Tetherを手に入れるためには、1USDを支払う(正確に言うとTetherを運営するTether社に対してUSDを預け入れる)必要があるという単純な計算で成り立っています。
それ故に、市場においてTetherはUSDを代替した通貨であると投資家たちは理解しています。
Tetherは実際に法定通貨との交換や、仮想通貨におけるボラティリティーの調整などあらゆる面で仮想通貨の市場に有益なシステムをもたらしてきました。
しかし近年では、Tetherの中央集権的立ち位置に対して不安が募りだしています。
Tether社が説明しているように、セオリー上はTether社の運営方法は仮想通貨の市場にTetherのユースケースを上手く生み出しているといえます。
特に上記でも述べましたが、安定した『Medium of Exchange (価値の交換)』としての役割は非常に高いといえます。(例えばETHLandなど)
しかし、Tether社もあくまでプライベートな企業なため、私たちは準備金として保管しているとTether社が主張しているUSDの存在を、その言葉や発言だけをソース元として信じなければならないという問題が生じています。
つい最近では、Tether社はいくらかのUSDがハッキング被害にあったことを公表しているほか、同社が本当にUSDを保管しているのかに対し懸念が募り始めています。
そもそもTetherはUSDに対して1:1の同等な割合の価値を持っているという『信頼』から成り立っている価値の交換としての仮想通貨であり、そこに疑いが生じるとなると、Tetherの市場における価値に疑問符がかかります。
そして、その疑問符は最終的に市場におけるTetherの価値が完全に失われてしまう結果に繋がりかねません。
仮想通貨の愛好家として知られているBitfinex’ed氏は同氏のMediumにてTether社が将来的に、そして中長期的にUSDと1:1の割合での価値の保証を続けていくのは厳しいのではないかという考えを主張しています。
Tetherは生き残るために分散化という選択を取るしかない
上記で言われているようなTether社の根本的な問題は確かに、近年言われていますが、それでもTether社は約5年間USDと同等な立場としての仮想通貨の位置を保ってきました。
そのため、今回の記事ではTether社に対抗できる様な分散型Tetherをイーサリアムのスマートコントラクトを用いて、作り出すことは可能なのかについて考えていきたいと思います。
まず第一に、TetherはUSDが保管されているという『信用』の元に成り立っていますが、スマートコントラクトを用いればわざわざその『信用』を得る必要性が無くなります。
では、スマートコントラクトを用いてどの様にTetherの代替通貨を作っていくのかについて具体例を交え見ていきたいと思います。
まず最初は、スマートコントラクトを持っているERC20トークンを発行するところから始めます。
そしてその発行後、発行したトークンのトランザクションが行われるように設計されたスマートコントラクトに対して『Oracle Call Back (オラクルコールバック)』により、データの受信が行われた際に限り、トランザクションが行われる様なシステムを追加します。
(オラクルコールバックとは、現実世界のデータをブロックチェーン内に記述する作業)
つまり今回のケースでは、オラクルコールバックによりUSDの情報をブロックチェーン内部に引っ張ってくるということになるため、USDとイーサリアムを関連付けた価格データをオラクルに埋め込むことになります。
また、ブロックチェーンアナーキストであるJitendra Chittoda氏によって開発されたSolidity Rule Engineを用いることにより、仮に運営内部で不正が行われるようなことがあったとしても自動的にUSドルの情報ソースが更新され、その中でどのソースを用いるかの投票を行うことが出来るようになるため、2重で分散型な通貨となり得ると言えるでしょう。
このシステムが構築されたうえで、トランザクションがどの様に行われるのか具体例を以下で見ていきます。
まず、例えばスマートコントラクト自体に対してUser1(スマートコントラクトによって祭祀に作成されたもの)からトークンを受け取ることを仮に『MyUSD』と名前を付けることにします。
その値に対して、スマートコントラクトが新たにUser2からイーサリアムを受け取り、この特定の関数が呼び出されると同時に、オラクルコールにより、USDとETHのレートを読み取ってこれる機能を追加します。
その後、最初のMyUSDと外部から取得したUSD/ETHのレートを比較し、計算を行います。
その計算結果に基づいて、ブロックチェーン上のスマートコントラクトは1USDと同額で釣り合う量のUser1に対して送金します。
もちろん、残りの余った金額に関してはスマートコントラクトを用いているため自動的にUser2に対して返金が行われます。
この様にスマートコントラクトとオラクルコールを同時に用いることにより、完全な分散化の上で、取引を行う通貨を生み出すことが出来ます。
言い換えれば、Tetherの様に運営内部が主体的に介入するのではなく、オラクルコールという外部要因が必ず関わっており、また上記で説明したようなスマートコントラクト上以外におけるMyUSDの販売を行うことが不可能なため、意図的にMyUSDの需要と供給に影響を与え、市場操作を試みることが不可能と言えます。
この様なシステムはPeer to Peerとスマートコントラクトの機能を基本的なトランザクションのシステム構築の上で用いたことにより、可能となっているといえ、Tetherの様な企業による運営が根本的には必要ないと理論的には結論付けることが出来ます。
Peer to Peerの機能、そしてスマートコントラクトの機能も全てプログラミングにおけるコーディングの上で成り立っているため、そのコンセンサスアルゴリズムを意図的に改変することはほぼ不可能と考えられています。
また、コーディングされてあることにより常にMyUSDの取引が行われるごとに、1USD相当に当たるMyUSDまたは1USD相当のイーサリアムの等価交換が行われることが確証されています。
加えて、APIを利用すれば取引所のシステムにも応用することが出来ます。
もちろん、このシステムを構築しTetherの代わりとなってくためには幾つか問題があることも事実です。
例えば、MyUSDの供給を行い続けるユーザーのために最初のスマートコントラクトの際に生じるトークンを配分し管理しなければなりません。
また、MyUSDの需要が急激に増え、インフレーションが起きた場合どの様に対応すればいいのでしょうか。
イーサリアム単体におけるボラティリティはどの程度影響を与え続けるのかについても疑問です。
つまり、エコシステムとして確立するまでの一番最初のスタートポイントであるスマートコントラクトの機能をどの様に働かせることが出来るか、という点が最大の問題になってきます。
考察:スマートコントラクトから広がる仮想通貨の可能性
ブロックチェーンが2009年にSatoshi Nakamoto氏によって発表され、それ以来ブロックチェーンはPeer to Peerの世界を作り出すことが出来ると言われてきました。
Peer to Peerの定義は以下の様に解説されています。
P2Pとはpeer-to-peerの略です。 インターネットにおいて一般的に用いられるクライアント・サーバ型モデルでは、 データを保持し提供するサーバとそれに対してデータを要求・ アクセスするクライアントという2つの立場が固定されているのに対し、 P2Pは各ピア(*1)がデータを保持し、 他のピアに対して対等にデータの提供および要求・ アクセスを行う自律分散型のネットワークモデルであり、 サーバまたはクライアントのそれぞれの立場に固定されることがありません。
つまりPeer to Peerのモデルが本質的にもたらすものは、仲介者の排除という点にありました。
しかし、Peer to Peerモデルを使えるようにするために仲介者が現れ、結局本質的なP2Pの意味を見失いかけているように感じます。
もちろん仮想通貨の取引所も仲介者であるし、今回取り上げたTetherでさえP2Pモデルに対する仲介者となってしまっています。
しかし、仲介者という立場上マイナスなイメージが強いですが、私たちユーザ視点で考えた時仲介者が与えてくれている利点は数えきれないほどあります。
いずれにしても、現在のP2Pは仲介者ありきの『信頼』によって成り立っているのは事実です。
その『信頼』が一度無くなってしまうと一気に今まで存在していたものが幻想となってしまうかもしれない危険性があります。
海外メディアWiredは『仮想通貨「テザー」の疑惑が本当なら、市場が崩壊するかもしれない──信頼性を損なう“事件”が続発』とタイトル付け、以下の様な考えを示しました。
米ドルの価格に連動していることを謳っていたが、発行額に相当する米ドルを発行元が保有していない可能性が指摘されているのだ。もし疑惑が本当なら、ビットコインを含むあらゆる仮想通貨の信頼問題に発展するだけでなく、市場崩壊につながる可能性すら見えてきた。
この様に、仲介者に属する『信頼』の崩壊はその仲介者が関わっている市場に大いに影響を与える結果へと繋がってきます。
単純に結び付けられませんが、記憶に新しいコインチェック社のNEM流出事件に関しても仮想通貨取引所という本来は『信頼』されるべきはずの存在がその『信頼』を失ったことにより、仮想通貨市場全体にとってマイナスな結果へと繋がりました。
上記で取り上げられていたようなP2Pによるシステムの構築は、未だ技術的問題を抱えているとはいえいずれ必然的に訪れるエコシステムなのかもしれません。
How to Create a Tether Killer with Smart Contracts
Stani Kulechov